4630万
いきなり降って湧いた大金に
心当たりなんてなかったけど
「どうぞ」とでも言うように
ぼくが手を伸ばすのを待っていた
ポケットに収まる全財産
期限切れのコンビニ弁当
「ただいま」も「おかえり」もない部屋
過去をリセットして
知らない所へ
ぼくを支配していたものから
逃げた気でいたのに
いとも簡単に捕らえられてしまった
神は見捨てない
努力は報われる
都合のいい言い訳は
いくらでも浮かんだ
でもそれは
するりと指の間を抜けていく幻だった
好きなおもちゃを取られた子供のように
泣いて 怒って 世の中を呪った
得たものを失うのは
最初からないより ずっと怖い
どうせ埒があかない人生なら
「未来」というチップをすべて賭けちまえ
ポケットに夢を入れたことが
罪と言うならば
ぼくはそれを償おう
法に裁かれ
世間に叩かれ
知らない人がぼくを語り
誰も知りたがらなかった
ぼくの人生が丸裸にされる
それでも
一度手にしてしまったものを
二度と訪れないチャンスを
簡単には手放せない
砂漠に浮かぶオアシス
蜃気楼と分かっていても
乾いたのどが水を求め
引き返そうなんて思いやしない
ぼく宛てに届いた甘い誘惑は
わずかにあったものまで根こそぎ奪い
愚かさだけが残された
ニュースが伝えるその男は
何を思っていたのだろう
浅はかな選択を憐みながらも
ぼくと私
そんなに違う気が なぜかしなかった
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